議論

「子どもが自分を好きでいられる道」を探る。pecoさんと考える中学受験。

2026.10.06
『中学受験には「議論」が足りていない』――その課題意識で始動した対談企画。第6回のゲストは、タレントやブランドプロデューサーとして活躍し、プライベートでは一児の母であるpecoさん。自身の受験経験や子育てのモットー、今の中学受験を取り巻く状況に対して思うことなどについて、SPRIX代表 常石博之と議論を交わしました。

子どもの純粋な“やりたい”を潰さず大切にしたい。

常石:初めまして。今日はよろしくお願いします。

peco:よろしくお願いします。私は8歳になる息子がいて、今はインターナショナルスクールに通っています。私自身、本当にお勉強が好きじゃなくて(笑)。それが息子にも伝わっちゃったのか、息子もお勉強があまり好きじゃないんです。私は子どもの負担になるような愛のかけ方をできるだけしたくないと思っているので、「息子がしたいことを応援する」という方針で子育てを楽しんでいます。ちなみに息子は今、俳優になりたいと言っていて。

常石:そうなんですね。その前は何になりたいって言っていましたか?

peco:数年前までは毎日のようにコロコロ変わってたんですよ。スパイダーマンになりたいとか、ダンサーになりたいとか、工事の人になりたいとか。でもここ1、2年は「アクターになりたい」と言い続けています。今はダンスを頑張ってるけど、この先いきなりお勉強が好きになるかもしれないし、その時その時のやりたいことを応援したくて。「子どもに何も願わない母親でいたい」って思うんです。

常石:素晴らしいお母さんですね。そう考えるようになったのには、どんな経緯があったのでしょう?

peco:私が自分の親にそうしてもらって嬉しかったから、ですね。私は4歳から12年間、本気でバレエをやっていたんです。週7でレッスンに通って、当時はバレエにすべてをかける日々を送っていたんですが、親はそれを全力でサポートしてくれて。私が頑張りたいって思うことを応援し続けてくれたんです。それが今の自信に繋がったし、「好きって素直に言っていいんだ」という考え方が自然と身についた。「お勉強しなさい」とは人生で一回も言われたことないです。

常石:言われなくてもできる子だったからじゃないですか?(笑)

peco:それもあるかもしれません(笑)。私は歳の離れた兄と姉を見て育ったからか、いろんなことを要領よくこなすのが上手かったんです。勉強に関しては、国語だけめちゃくちゃ得意で、中学時代は勉強しなくても常に学年上位。それはきっと、純粋に国語が大好きだったから。理数系は全然ダメで、赤点を取ったりしてましたけど。

常石:なるほど。

peco:それでも怒られなかったし、テスト期間中に遊んでいても注意されなかった。それが私にとって「親が私のことを全力で信じてくれた」という自信になりました。バレエにしてもファッションにしても、「あなたなら大丈夫」っていう無言の信頼が伝わってきたんです。それって大人になっても忘れないし、めちゃくちゃ強みになると思うんですよね。だから私も息子を信頼して、彼がやりたいって思うことを全力でやらせてあげたい。親がある程度レールを敷いてあげる方がいいっていう考え方もわからなくはないし、なかなか難しいですけど…。

常石:レールを敷いてあげた方が子育てしやすいっていう部分はあると思います。でも親が決めすぎるのもよくないし、塩梅が難しいのですが。

peco:パパもママも優秀で、子どももお勉強が得意で…っていう才色兼備なファミリーと一緒にキッザニアに行ったことがあって。私は息子が「ダンサーやりたい」とか「ピザやりたい」とか言うのを好き勝手にやらせていたんですが、そのママは「前と同じことをやったらここに来る意味がない」「次はこれをやった方がいい」と丁寧にアドバイスしていたんです。それを見た時に、私は純粋にすごい!って感心して。良い悪いはないと思うんですけど、本当にいろんな考えがあるんだなって改めて気づいて。その上で、私はやっぱり純粋な“やりたい”を応援したいと思ったんです。息子は今まで本当にいろんなことをやってきて、お相撲の体験にも行ったりしたんですよ。

常石:相撲ですか!それはすごい。

peco:4、5歳の頃に、突然「お相撲やりたい」って言い出したんです(笑)。興味があるうちに連れて行ってあげようと思って、習えるところをすぐに調べて。結局、本格的に習うには至らなかったんですが。仮に本気で「お相撲さんになりたい」や「スパイダーマンになりたい」と思っているとして、大きくなるにつれて「本当になるのは難しいかもしれない」って思う時がきっと来るじゃないですか。その時に気づけばいいって思うんですよ。

常石:いずれ気づくから、親が先に止める必要はないと。今は大学生でも将来を決めきれない人が多いと言われていますが、小さい頃ってみんないろんな夢がありましたからね。それを無理に潰す必要はないと僕も思います。

peco:30歳から何かを目指しても全然間に合うと思いますし。最初から予防線を張らなくてもいいっていうのは強く思います。例えば小6で「スパイダーマンにはなれなさそう」って気づいたとしても、同時に「スパイダーマンみたいなかっこいい映画を作れる人にはなれるかな」って別の夢に向かえるかもしれない。だから子どもの時点で何か一つに絞らないといけないとか、正しい夢に向かわせないといけないとか、そういうのは考えない方がいいと思っています。

常石:さっきのキッザニアの話もよくあることだなと思うのですが、「いろんな選択肢から合理的に選びなさい」っていうのは子どもからするとけっこう難しくて。「僕はピザが大好きだから、次に来た時もピザ焼きたい」っていうのでいいんですよ。

peco:もしかしたらその情熱が続いて、イタリアまで修行しに行ったり、有名なピザ屋さんになる可能性だってあるじゃないですか。それってすごくかっこいいと思います。

常石:たしかにそうですよね。でも実際は、「相撲やりたい」って言われても「相撲なんて習えないよ、みんなと同じサッカーにしなさい」とか「そんなことより勉強頑張りなさい」とか言ってしまう親の方が多いと思うんです。そうやって“子どものやりたいこと”を否定してしまったり、言葉にはしなくても顔に出てしまった時、子どもの自信ややる気を損なわないためのリカバリー策って何かありますかね…?

peco:うーん、私だったらどうするかな…。もし否定するような言葉を言ってしまったとしたら、本心でなくてもとりあえず「あなたがやりたいことが一番だけどね」って付け加えるとか。「なんだかんだ僕のことを応援してくれてるんだ」って思ってもらうために、嘘でもいいからとりあえず言葉にするかもしれないです。例えば「お相撲さんになりたい」と言われた時に思わず「えー」みたいな反応をしてしまったとしたら、「ママはお相撲のことが全然知らないから、びっくりしちゃっただけだよ、ごめんね」って伝えたりだとか。

常石:咄嗟のカバーが大切ですね。

時には、「一生懸命やってほしい」という厳しさも。

peco:なんか美談みたいにいろいろ話しちゃったんですけど、私はシンプルに面倒臭がりなんですよ。子どもにやりたくないことをやらせるのって超大変じゃないですか。私はそれがしんどい。だからもう、「お勉強したくないならしなくていいです、ママも無理やりあなたにやらせるほどのパワーはありません」って感じなんです。

常石:それもいい発想ですね。やりたいことをやらせてあげた方が、結果的に親も楽。無理やりやらせる方が大変だと。とはいえ最低限やっておかなきゃいけないこともある気がしていて。pecoさんは、お子さんに対して何か厳しく教育するような領域はありますか?

peco:たくさんあります。人としての礼儀には厳しい方で、挨拶や食事のマナーに関してはいろいろ注意しています。お箸の持ち方とか、最後まできれいに食べ終えるとか、そういうのはめっちゃ怒りますよ。

常石:最低限の勉強、例えば「宿題はやりなさい」とかはありますか?

peco:私自身、宿題と授業中の板書だけはきちんとやっていたタイプなので、そこは息子にもしっかりやらせたくて。息子の学校はまだ宿題がないんですが、この先宿題を出されたら「それだけは絶対にやらなあかんで」と言おうと思っています。習い事に関しても、私はちょっと厳しい部分があって。息子は3歳から7歳半までクラシックバレエを習っていたんですよ。嫌とか言わずに通っていたけど、経験者の私から見ると、全然一生懸命やってないのが伝わってきたんです。楽しんでるけど、上手くなりたいとは思っていなさそうだなと。それで一度、息子と話したんですよね。「バレエどう?」って聞いたら「すごく楽しい」と。でも「一生懸命やってる?」って聞いたら「それはできてない」と自覚している様子で。話し合った結果、バレエは一回やめようって結論になったんです。

常石:なるほど。

peco:バレエをやめた後に「ヒップホップダンスを習いたい」と言い出してくれて、今はすごく真剣にやっています。もう比べ物にならないくらい一生懸命やっていて。でも、もうすぐ発表会があるんですけど、そこで発表するダンスが少し難しいんですね。息子は心が折れかけていて、レッスンから逃げそうになっていたんです。だからこの間、「お客さんの前に立ってみんなと力を合わせて踊るって自分で決めた以上、絶対に最後までやり切らないといけないよ」と伝えて。

常石:けっこう厳しい言い方ですね。

peco:「別に完璧に踊ってほしいわけじゃなくて、一生懸命やることの大切さをママはわかってほしい」と。「あなたが憧れるダンサーさんは、みんな一生懸命練習してるからね」「無理にやれとは言わないけど、自分で考えてみて」って伝えました。最近やっと腑に落ちたのか、毎日ちゃんと練習するようになりました。だから、やりたいことを否定はしないけど、「やるって決めたことはきちんとやりなさい」っていう気持ちは人より強い方なのかもしれないです。

常石:どこに行って何をしようがウェルカムだし、本当に心の底から応援しているけど、チームに迷惑をかけたり、相手を不快にするようなことをするのは違うぞと。そこに関してはけっこう厳しい目線を持っていらっしゃるんですね。親としてベストなバランスを取ろうと考えてそうしているというより、pecoさん自身の軸がしっかりしているんだろうなと思いました。だからカリスマ的存在なんでしょうね。

peco:ありがとうございます(笑)。

「知識は無駄にならない」と大人になってから実感。

常石:中学受験についてもお聞きしたいのですが、pecoさん自身の受験はどんな感じでしたか?

peco:私は人並みにお勉強ができるタイプだったのですが、算数がどうしても苦手で…。中学受験に向けて算数だけ塾に通っていました。大嫌いな算数のためにわざわざ塾に出向くなんて、苦痛で仕方なかったです(笑)。それほど偏差値が高い中学ではなかったので無事に合格できて、私自身は中学受験が辛かったという記憶はないんです。でも今、ママ友と話していると、みんな「東京の中学受験は競争がヤバい」って。

常石:その通りです。首都圏だと5.5人に1人が中学受験をしていて、しかも1人あたりの出願校も多いという状況になっています。

peco:競争がヤバいから小1から勉強しないといけない、でもそうすると小学校6年間を勉強に捧げないといけなくなっちゃうから、小学校受験をさせる家庭もあると。もうびっくりですよ。たくさん勉強したらきっと子どもはストレスが溜まるだろうし、そのストレスを抱えた子どもをケアする親にもストレスがかかるだろうし…。面倒臭がりの私には到底できることじゃないなって思います。

常石:「他の選択肢もあるよ」ってなかなか言いにくいですか?

peco:言いにくいですね。でも考えてみたら、私がすごく仲良しのママ友はみんな公立かインターです。公立に通わせているママは一時期すごく悩んでいて、小学校受験の塾に見学も行ったみたいなんです。でも、「あんな戦いの場に私は入れない」って公立に通うことを決めて。そのお友達の周りでは中学受験塾に通っている子がけっこう多いと聞きました。

常石:争いから逃げたけど、また次の争いが始まってしまって…。

peco:そうなんですよ。当然みなさん適当に道を選んだわけではないだろうし、選んだ道に正解不正解はないと思うんですが。家庭によって子どもの育て方がいろいろあるんだなといつも思います。

常石:pecoさんの勉強についての考え方も知りたいです。

peco:正直、高校生の頃は「こんなこと勉強しても意味ないよ」って思ってました。私は自分の目指す未来が100%はっきり見えていたから、そこに数学なんて要らないって思ってたんです。「ここで数学の授業を受けるより、原宿の街を練り歩いた方が自分の未来に意味があることなのに」って本気で思っていました。でも、大人になってから少し考えが変わってきて。息子が「紙でロボットを作りたい」と言った時に、立体をうまく作れなくて困ったんです。学生時代に意味がないって思ってたことも、ひょんなことで役立ったりするんだとわかりました。

常石:なるほど。

peco:塾で一生懸命頑張っている子はきっと私みたいな考え方はしてないかもしれないけど、もし「何のために勉強するの?」と思っている子がいたら、「知識は損にはならない」ってことと「意味ないと思う時間を過ごすことも勉強」ってことを伝えたいです。大人になったらやりたくないことをやらないといけない瞬間があるし、時には誰かに従わないといけないこともある。嫌々机に向かう時間は、そのための練習でもあるのかなって思います。だから、学びたいって思う気持ちはめちゃくちゃ素晴らしいと思いますよ。私も大人になってから英語の勉強を始めて、この間はオーストラリアの語学学校に2週間通ってきたんです。

常石:すごい行動力ですね。

peco:勉強する前の私だったらそこまでの行動力がなかったと思うけれど、学んで話せるようになったという成功体験が自分を変えてくれました。だから本当に、勉強はただ知識が増えるだけでなく考え方にも影響を与えてくれるなと思っています。

「自分にはこれがある」を探すお手伝いをする。

常石:中学受験をする子どもの中には、「親に喜んでもらいたいから受験する」と親のために頑張る子がけっこういて。pecoさんはお子さんの“本当の気持ち”を潰さないためにどんなことを心がけていますか?

peco:子どもは親の些細な表情の変化もよく見ているから、無理に嘘をつくのもなかなか難しいですよね。私は本当に心から「どんな道を選んでくれてもいい」って思っているんですが、それは私もそう育てられたから。母は私に対してただ一つ、「自分のことを好きになってほしい」ということだけ願っていたらしいんです。それを聞いた時に、子育て大成功だ!って思って。今の私は自分のことが大好きなので。

常石:素晴らしいですね。

peco:だから私も、息子が何の職業になってもいいし、結婚してもしなくてもどっちでもいいし、どこの国に住んでもいいけど、「自分のことを好きでいてほしい」ってことだけは強く願っています。でもそれって「自分を好きになれ」と言われてなれるものでもないし、どうやったらなってもらえるんだろう?って考えた時に、ダンスでもゲームでもお勉強でも何でもいいから、「自分にはこれがある」っていう自信があることが大事なんだと気づいて。例えば「学校でうまくいかなくても、放課後は大好きなダンスがある」とか。そう思える子は強いと思うし、それがあれば自分のことを認めて、好きでいられる。自分のことを好きでいられれば、大人になって何か壁にぶち当たった時も立ち直れると思うんですよ。だから、そのために私は、息子が「自分にはこれがある」と思える何かを探すお手伝いをしようといつも考えています。

常石:直接的な言葉として「自分を好きでいてね」って伝えることもあるんですか?

peco:そうですね。さっき言ったような「自分にはこれがある」も大事ですが、もっと前提の話として、「自分はこの世に生まれてきて最高の存在なんだ」って思ってほしいんです。だから毎日のように「あなたがママのところに生まれてきてくれて嬉しいよ」ということを伝えるようにしています。「勉強でいい点を取らないと価値がない」とか「ダンスのコンテストで順位に入らないと価値がない」とか、そういうふうには絶対に思ってほしくなくて。「自分にはこれがある」という強みは自分を助けてくれるものではあるけど、同時にそれがプレッシャーにならないといいなと思います。

常石:なるほど。何かを見つけられたらすごく強いけど、仮に何も見つけられなくても大切な存在だよと。

peco:この間めっちゃ嬉しかったのが、息子がいきなり好きな人に順位をつけだしたんですね。その時に、一番はママ、二番はダダ…とか言っていく中で、「ゼロ番は自分」って言ったんですよ。どこまでわかって言っているのかわからないけど、そう思ってくれていることがすごく嬉しかった。

常石:最高ですね。私は子どものランキングで三番でした。義理の母に負けてしまって。

peco:あら、おばあちゃん強いですね(笑)。

常石:pecoさんのように「子どもがやりたいことをやらせてあげたい」と思う親は多いと思うんですが、実際のところ、「何も見つからなかったらどうする?」「家でスマホとゲームばかり見てて心配」っていろいろ不安になってしまう気もしていて。何かが見つかるまで待てたらいいけれど、待っていられない、子どもを信じきれない親に対して、何かアドバイスはありますか?

peco:例えばYouTubeばかり見ている子だったら、とにかくいろんなジャンルの動画を見せてみるとか。ダンスの動画や、LEGOを組み立てる動画、フラッシュ暗算の動画とか…。そうやっていろいろなジャンルのものを見せているうちに、何か一つ引っ掛かるものがあるかもしれないって思います。

常石:それはアリですね。YouTubeを見るのをやめさせるのは現実的じゃないから、見せるものを変えてみると。

peco:「最近ママこれ気になってるから一緒に見ない?」って誘って見せてあげたらいいと思います。で、何かが引っかかった瞬間を見逃さないように頑張る。

常石:仮に勉強に一直線で進んでいる親子でも、息抜きとしてYouTubeを見せる中で、将来に向けた他の選択肢が見えてくるかもしれないですしね。pecoさんのチャンネルでそういうお子さん向けのコンテンツを発信してくださったら最高ですよ。

peco:いいですね、やってみようかな(笑)。

常石:今は息子さんが小学生だと思うのですが、中学や高校、大学など、この先の進路についてはどんなイメージを描いていますか?

peco:息子は現時点では「大学に行かない」と言っていて。行かないなら行かないでもちろんいいんですが、「ただ行かない」ではなく「これがあるから行かない」であってほしいと思うんです。だからダンスなのか、専門学校や就職なのか、何になるのかまだわからないけれど、自信を持てる道を一緒に探していきたいなと考えています。行き先がどこであれ、「子どもが自分を好きでいられる道」を見つけて進んでいきたいですね。

<対談ゲスト プロフィール>

peco(タレント、ブランドプロデューサー)

1995年生まれ、大阪府出身。原宿系ファッションのカリスマ読者モデルとして10代を中心に人気を集め、パートナーのryuchellとともにバラエティ番組やTVCMに多数出演。ファッションブランド〈Tostalgic Clothing〉のデザイナー&プロデューサーとしても活躍中。育児や生活の様子を投稿したSNSも注目の的。

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