議論
塾の代わりに必要なのは “島”? ベテランちさんと「健全な中学受験」を考える。
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小2から塾に通い始めた受験生時代。
常石:SPRIXの常石です。よろしくお願いします。
ベテランち:ベテランちです。東京大学医学部医学科5年生で、今年で29歳になります。実はSPRIXさんとは、「Raise You」というYouTubeチャンネルを一緒にやらせてもらっています。
常石:今日は改めて、中学受験について深くお聞きできたらと思っています。私たちが行った調査によると、中学受験経験者の6割強が小3から受験を意識していると。中には小学校に入る前から準備を始める親子もいるような状況です。ベテランちさんも中学受験を経験していますが、当時と比べて、今の状況をどう考えていますか?
ベテランち:「Raise You」で受験生の親御さんから話を聞いていると、昔より早くなってるんだろうなって感じます。僕は2010年に灘中学に入学したんですが、当時は小4から塾に通う子が多かったですね。まぁ僕は親がおかしかったんで小2から行ってたんですけど。「絶対に医者にさせる」という強い決意で塾にぶち込まれたんです。一緒にYouTubeをやっている灘の仲間には小5スタートの人とかも全然います。

常石:塾にはどのくらいの頻度で通っていたんですか?
ベテランち:小2は週2くらい、小3からは週4くらいで行ってました。 小2の時に近所の中学受験塾に連れて行かれて、入塾テストを受けてみたら、やたらと成績が良くて。教室長みたいなおじいちゃんに「飛び級させなさい」と言われたんです。それで親がはしゃいで、塾に通うようになったって感じです。
常石:それだけ成績が良ければ、コスパを考えたら、5年生からビシッと勉強すれば十分受かるはずって思っちゃいますけど…。受験生の親の“念のため病”はやっぱりどうしても根深いですね。
ベテランち:そうですね。やっぱり、僕は子どもの時に遊ばせてもらえなかったせいで今こんなふうになっちゃってると思うんで。大学もろくに行かへんくて、 就職もしなくて…。子ども時代に勉強しかさせてもらえないと、将来こういう子になる可能性は高いかなって思います。
常石:子どもは、親が「この学校に入ってほしい」と思ってるはずだって頑張る。反対に親は、子どもが「この学校に入りたい」と思っていると考える。その無限ループでどんどん加速していってしまう部分があるなと思っていて。当時は親に対してどう思っていましたか?
ベテランち:僕は大人びるのが早かったんで、「こいつら俺に勉強させたいんや」「自分らに学歴がないから子どもで取り返そうとしてるわ」みたいなことを考えてました。当時はなかった言葉ですけど、“学歴コンプ”みたいなオーラを親から感じていて。なんか「チョロいな」と思ってた記憶があります。「親って成績が良かったら褒めるんや、現金な生き物やな」っていう。いわゆる無償の愛みたいなものも、それはそれであったとは思うのですが。
常石:愛されている実感はあるけど、「成績には特に反応する」と。

ベテランち:そうですね。「ここにツボがあるな」っていうのはわかってました。なんか子どもって、言葉にできないだけで色々気づいてる気がするんですよね。
常石:そうですね。成績以外ではあまり反応しない親を見抜いた子どもがちょっとひねくれてしまう、というのはよくあることです。
ベテランち:ですよね。僕はそこまでいかなかったけど、灘中にはめっちゃ多かったです。やっぱり親がどうかしてないとなかなか灘に入れないんで。僕の親はまだゆるい方というか、それなりに点を取れてたら普通にテレビとか見られる程度だったんで。中学入ってから病んじゃう子たちの話を聞くと、親からの圧がエグい家庭が多いですね。
常石:灘中学に入学した後の話、とても気になります。当時のエピソードで、何か印象に残っているものはありますか?
ベテランち:よく噂で言われてたのは、同期で今は立派に医者になってる友達がいるんですけど、そいつは首から下を地面に埋められて、頭だけ生えてる状態でお母さんが参考書を顔のそばに置いて勉強させてたっていう。これは半分嘘なんですけど。でも、ほんまにその子はエグい事件を起こしちゃって。親が厳しすぎて、テストで全教科限りなく満点に近い点を取ってないと怒られちゃうと。学期末のテストで、その時は家庭科もテストがあったんです。家庭科なんて別に80点とかでも全然いいじゃないですか。その子はたしか92点とかだったんですけど、正解とも不正解とも取れるような問題がバツにされてて2点下がってたと。それで、テストが返ってきた時に、家庭科の先生に詰め寄ってブチギレて。「家庭科でキレたあいつ、親が超厳しいらしい」みたいに噂になって。まぁ本人も悪いけど、親が「家庭科何点でもええよ」って言ってたら、そこまでいかんような気がするんです。あとは、親が厳しすぎるとカンニングしちゃう子とかも多いですよね。
常石:大人になってからカンニング経験を告白する中学受験経験者はたくさんいます。
ベテランち:だって、点数悪くても怒られんかったら別にカンニングしないですもんね。
常石:そうですね。そういったマイナスの面もありつつ、努力して受かった学校でのびのび教育を受けたという、プラスの面もあると思うんです。そのあたりはどうですか?
ベテランち:まず、僕みたいな奴が生まれたってことがすごいですよ。“これ”に仕上がるってすごいことですから。 きっと他の学校に行ってたら、締め付けられてダメになってますよ。この状態ですくすく成長できたってことは、相当のびやかな環境だったってこと。僕のYouTubeに「こいつヤバすぎる」みたいなコメントいっぱい来ますけど、中高でそんなこと言われたことなかったですもん。全員変なんで。勉強が異常にできるってだけで既に偏りがあるというか。体育の授業で一歩も動かへん奴とかもいっぱいいるわけですよ。僕みたいに何年も留年したり、寝坊しちゃう子もいっぱいいて。そういう偏った奴がいっぱい集まる学校なんで、居心地は良かったです。もし自分の子どもが偏ってたら灘に入れたいと思いますね。
常石: なるほど。勉強側に偏ってたらね。
ベテランち:そうです。勉強が得意で他がめっちゃ苦手な奴なら入れたいなと思って。そういう奴は、公立中学に行ったらいじめられちゃう可能性もあるかもしれないし。
常石:勉強だけずば抜けてできると、いじめ対象になってしまうこともありますよね…。それだったら中学受験で早めに勉強意識が高いコミュニティに入れた方が安全と考える家庭も多いです。
中学受験の責任は親が持つべき?
常石:「勉強だけできる」という偏った特性は中学受験の適性の一つでもあると思うんですが、逆に、どんな親子に対して「この子は受験しない方がいい」と思いますか?
ベテランち:中学受験させて子どもにブチギレてしまうなら、絶対しない方がいいんちゃうかなとは思いますけどね。
常石:きっと、ブチギレたくてブチギレてる親はいないんですけどね。誰も悪気はないっていう前提なんだけど、いわゆる合成の誤謬というか…。親は子を思って、子は親を思って、親は当然子どもを愛してるんだけど、何かのバランスが崩れてちょっと不幸になってしまう。そこにどうにかメスを入れたいんです。
ベテランち:これは僕の持論になっちゃうんですが、受験勉強してたらほぼ絶対揉めるじゃないですか。だから、中学受験に関しては親が責任持った方がいいと思っていて。そもそも小学生なのに“自分の意思でやってる”ってことにしてしまうのはあまりにも背負わせすぎているというか。仮に子どもがやりたいって言って親が年に100万払ったとして、それを「子どもがやりたいって言うから100万払ってあげた」っていう体になってたら、受験で落ちた時に子どもが可哀想すぎる。 だから、たとえ子どもがほんまにやりたいと思ってたとしても、「親がさせたい」っていう体を取った方がいいんじゃないかと思っていて。

常石:なるほど。たしかにそうですね。
ベテランち:自分の親や周りの親御さんを見ていても、「なんでこんなにやってあげてるのにサボんねん」ってなった時に揉めてるイメージがあって。もう、端からそれ諦めた方がいいんちゃうかなっていう。
常石:言葉を選ばずに言うと、「子どもは親のもの」というか、「親は子どものことを一方的に決めていい」みたいな思想もあるじゃないですか。
ベテランち:何より、親がお財布を握っていますしね。仮に受験させるとしても、「させてあげてる」と取るのは違うかなって思います。だって放課後に小学生を街に放り出したら、絶対公園や図書館に行くはずなんですよ。自ら塾に走って行って、学校でもテストを受けたのに塾でまたテストを受けたいって思う子どもなんていないはずなんで。「後々の人生で君が得するんだよ」みたいなことは言ってもいいと思うけど、「お前のためにやったってんのに」ってなっちゃうと良くない。これは中学受験以外でもそうですね。習い事を頑張ってる子に「金出したってんのに」「送り迎えしたってんのに」って言っちゃうとか。そういうのは悪影響ですよね。
常石:中学受験せずに中学生になって、高校入試を控えた時の親子関係にも、やっぱり同じことが言えますかね?
ベテランち:基本は同じかなと思います。中学受験は別に経験しなくても進学できるから、余計に難しい。とはいえ、トップ校に入れたいってなったら中学受験でスタート切っとかないとなかなかキツいのかな。
常石:“念のため”で早慶やMARCHの付属を受ける親子は多いですね。もしかしたら大学受験で東大や京大に行けるかもしれないけど、この先どうなるかわからないから早めに安定の道を掴んでおくっていう。
ベテランち:「親の責任でやってください」みたいなことをさっき言いましたけど、いざ親の目線に立ってみたら、私立大の付属に入れといた方がいいのか、普通の中高に入れて大学受験で勝負させた方がいいのか、まったくわかんないですね。決めるのが難しすぎる。
受験も就活も、すべてが加速し続けている。
ベテランち:この間別の仕事で、中学受験する関東の子どもは平均7、8校受けてるって聞いたんですけど。
常石:そうです。たくさん受けて、たくさん落ちているっていう状況です。

ベテランち:小学6年生が10校受けさせられて8校落ちるとかって、だいぶキツいなと思いました。大学生の就活でも病んじゃう人が多いのに。
常石:どこかに引っかかるように数を増やして確率を上げようっていう考えですね。
ベテランち:学校側もいっぱい受けに来てくれた方が受験料をいただけて嬉しいですしね。さっき合成の誤謬っていう話もありましたが、資本主義の中に教育産業というものがある限り、この状況が加速していくという…。
常石:そうなんですよ。それをどこかで断ち切りたいと思っているんです。
ベテランち:しかも少子化で子どもの数も減ってるんで、親の予算も相対的に増えてるじゃないですか。一人っ子の場合は、もう一点集中ですし。
常石:塾業界にいると「少子化ですけど大丈夫ですか?」ってよく言われるんですが、実は横ばいか、少し伸びているくらいで。子どもの数は減っているけど、塾に通う子どもの割合は上がっていて、かつ単価も上がっているので。塾を経営する立場で言うのも変ですけど、ちょっとおかしい状態なんですよ。 掛け金がどんどん上がっていって、その分子どものプレッシャーになってしまっている。
ベテランち:就活とかも同じですよね。どんどん早くなって。
常石:今は大学受験も早くなっていて、一般入試までどっしり構えていられる大学も少なくなってきています。みんな早め早めに、推薦や総合選抜で受け入れていく。
ベテランち:東大ですら推薦始めてね。
常石:「誰でもいい」なんて誰も言えないけど、他に囲われちゃう前に生徒を取ろうみたいな。中学受験だけが問題というより、あらゆるものが青田買いになって、子どもの負荷がどんどん高くなってしまっていますよね。
ベテランち:そんなん言われたら、余計子ども育てるの大変やなって思っちゃうじゃないですか。
常石:それでさらに少子化が進んで、受験や就活がどんどん加速して…。ベテランちさんみたいな方に、「ちょっとみんな立ち止まって考えて、一回落ち着こう」と言ってもらいたいですよ。
ベテランち:はい。僕はだいぶ落ち着いてる状態ですからね。「あれ、俺って卒業するんやっけ?した方がいいんやっけ?」って早5年ですから。落ち着いて考えてるんです、今。
常石:落ち着いた結果なんですね。
ベテランち:果たして卒業するべきかどうか、と。
常石:してくださいよ(笑)。

学歴と「人生が楽しいか」はまったく関係ない。
常石:止まらない中学受験の過熱、どうしたら止められますかね?
ベテランち:中学受験以外にママ友界隈でマウント取れるものを新しく発明したらいいんじゃないですか?全員がマウントのために受験してるとは言わないですけど。仮に僕が子育てするとして、パパ友に「うちも塾に行かせてるよ」って言われて、自分が塾に行かせてなかったら「え?俺って子どものこと愛してないんかな」みたいに思っちゃうかもしれない。ほんまは違いますけど、課金してない=愛してないって感じになっちゃうというか。勉強以外に課金する選択肢は、スポーツさせるか、ピアノやバレエなどのコンクール系が占めてると思うんですけど、それのもっとまったりしてるやつを流行らせたい。
常石:なぜ“まったり”?
ベテランち:ピアノやサッカーは、中学受験ほどではないにせよ、ガチガチでやらせる方向にどうしても向かっていく世界だと思うんで。「子どもにゆとりを与えてる」というマウントを取れる習い事がいいですよね。例えば、すごいおしゃれな島があって、そこに行かせてるとか。ボーイスカウトとかもかっこいいじゃないですか。
常石:心にゆとりができそうですよね。
ベテランち:そうそう。そういうのがイケてるっていう潮流を作って、「もう子どもを塾にぶち込む時代は終わりました」と。「次は自然です、マインドフルネスです」とか言って、子どもに瞑想とかさせる。
常石:なるほど。
ベテランち:「◯◯ちゃんは中学受験塾行ってるの?へー、うちは瞑想」みたいな。大人はそこらへんがけっこう多様化してるじゃないですか。僕みたいな人間でもYouTubeで再生数を稼げたらご飯は食べられるわけで。実習で「毎日8時に病院来い」と言われて涙出ちゃうような僕でも、得意なことをやったら生きていける。“好きなことで生きていく時代”と言われる中、子どもの選択肢はあまり多様化できてないですよね。
常石:そりゃあサッカーやピアノで食べていけたらかっこいいけど、特別な才能のない普通の子どもだと、どうしてもやっぱり一旦勉強に進もうってなってしまうんですよね…。
ベテランち:そうなんですよね。親が下振れを避けてあげたいって考えると、やっぱり一番マジョリティの選択として勉強になるっていう。誰かの動きが早くなったら周りもどんどん早くなっていくし…。だから僕は、自分の子どもには勉強させんとこうかなって思っていて。だっていくら勉強しても、日本国内だと偏差値的には僕を超えられないわけじゃないですか。
常石:親を超えられないと?
ベテランち:そう。それこそ理三には親も理三出身って子がいっぱいいるんですけど。それって子どもはそんなに嬉しくないんちゃうかなって思ってて。嬉しさよりプレッシャーが勝つと思う。
常石:やっぱり親が基準ですからかね、子どもにとっては。
ベテランち:なんで、僕の子どもには僕が苦手なことにチャレンジさせたい。例えばバトントワリングとか。仮にバトントワリングで県大会ベスト128位とかになっても、「え、128位って凄くね?お父さんはまったくできないよ」って言ってもらえたら、「まあええか」ってなると思うんで。

常石:そういう勉強以外の軸を見つけると。
ベテランち:最近、医者の間では医大から美容医療に進む人が問題視されてるんですよ。別に個人の自由だろって思うんですけど、このままだと医療立ち行かなくなるんじゃないかと言われていたり。僕のSNSにも「美容やったら怒ります」みたいなコメントが来るくらいで。僕自身は美容に進む気はないけど、容姿に悩む子を集めて「大丈夫大丈夫、可愛い」って言って、金だけもらって帰らせるっていう病院があったら流行るんちゃうかなと思っていて。
常石:なるほどね。気持ちを上げてあげる病院ですね。
ベテランち:ほんまにどうしてもしたい子はすればいいけど、するかせんか迷ってるぐらいの子が、「いや、せんでもめっちゃええけどな」って言われたらたぶん嬉しいと思うんですよ。それの塾バージョンで、塾に入れるか悩んでる親に「入れなくていいんじゃない」って言ってあげる。でもそれだと儲かんないんで、「月1で面談しましょう」って。ビジネスとしてスケールさせようと思ったら相当難しいと思うけど、僕個人ではけっこうやりたいですね。
常石:ベテランちさんみたいに小2で高得点が取れた子がいたら、「十分余裕あるから、少なくとも3年生、4年生は入っちゃダメ。5年生の時にもう1回来て」と。ただそれだと儲かんないから「月に1回様子を見せに来て」っていうことか。面白い。
ベテランち:例えば、塾が運営する島があって、「勉強させるか島に行かせるかを今決めます」とテストを受けさせるわけですよ。一定を上回ってたら「まだ早いです」と。「もう十分できてるんで、小4までは勉強頑張らなくて大丈夫なんで、島に行きましょう」って島の月謝を取るんです。 逆に一定を下回ってたら、「この学力だと変に中学受験してもストレスが溜まるだけなんで、中学に入るまで島行きましょう」って。ほどよい偏差値の子が来た時だけ、「この能力値でこの感じなら一番コスパ良くどっかいいとこ入れます」みたいな。具体的に合格ルートが見えた時だけ、塾に入れて勉強させる。
常石:それはすごくいい。勉強以外のもので、勉強と同じくらいみんなが打ち込んで、中軸を打てるようなコンテンツというか。
ベテランち:島に行った子どもがありえへんくらい笑顔で帰ってきたら、さすがの親も「また行かせよう」ってなると思うんですよね。
常石:それはあると思います。
ベテランち:絶対笑ってないもんな、塾の帰りって。
常石:子ども時代を振り返ると、やっぱり楽しかったのは公園で遊んだこととか。今の子たちの場合はゲームですかね。ゲームも決して悪くなくて、ものによっては頭の回転を良くすることもあると思うのですが。
ベテランち:あとは、名作の映画をたくさん見せるとか。フランス映画ばっかり見せる塾があったら絶対入れたいです。自分で見せるのは大変なんで。親と一緒だと「俺は見ねえよ」ってなるじゃないですか。陽気な、子どもに好かれる兄ちゃん姉ちゃんみたいな先生が、とにかく名作を紹介してくれるとこに入れて、教養深い子にできるんだったら入れたいって思います。今は“文化資本”とかも流行ってるんで、いけるんちゃいます?

常石:なるほどね。
ベテランち:SPRIXで島の事業をやりましょうよ。僕、アドバイザーやりますよ。島アドバイザー。
常石:本当ですか。SPRIXグループの湘南ゼミナールでは夏に勉強合宿をしているんですよ。そういうのを島バージョンでやれたら楽しそうですね。
ベテランち:合宿とかはめっちゃ楽しかった記憶ありますよ。これからいろんな教育産業の会社さんが乗り出していくということになるんじゃないですか。新しいフロンティアは島だと。
常石:じゃあそれでうちが潰れたり、株価下がったらベテランちさんが買い支えてくれると。
ベテランち:あ、もちろん。それ下がった分買います。ツイートするんで。「一万株買いました」みたいな。
常石:それはもしかしたら捕まるやつかもしれない(笑)。
ベテランち:知識なくてすいません。冗談ですから。
常石:そうやって子どもを取り巻く価値観が多様になったらいいなと思いつつ、とはいえ学歴を重視する世の中はそう簡単に変わらない気もしていて…。高学歴という立場から見て、率直に「学歴には価値がある」と感じますか?
ベテランち:まるで学歴が服を着て歩いてるような僕が「価値なんてないです」って言うと、「お前どんだけ学歴を利用してここまで来たんだよ」っていう話になっちゃうんですけど。僕個人の気持ちとしては、学歴はわかりやすくお金になるし、初対面の人から信用を得やすいとかのメリットはあるかもしれないです。でも、「自分の人生が楽しいかどうか」と学歴はまったく関係ないと考えていて。それはやっぱり、成績優秀で学歴はあるけど人生があまり楽しくないっていう子を見てきて思ったこと。だから僕らのYouTubeは、東大っていう餌を撒いて、いろんな人を釣り上げて、動画を再生した人に「東大に行く以外にも素敵なことがいっぱいあるんだよ。それではみんな、雄大な海にお帰り」というメッセージを伝えたいと思って日々やってるんです。なかなかうまくはいかないですけどね。
常石:今の話は、僕らがやっていることにも繋がるかもしれないですね。中学受験に苦しめられている人たちやこれから受験に向かう人たちに向けて、うまく海にお帰りいただく、受験以外に視野を広げてもらえるような何かを提供できると、僕が求めている答えにも繋がるんだろうなと。そこを探っていきたいです。
ベテランち:そうですね。まあ、親子で揉めないんだったら別に中学受験だろうが高校受験だろうが何やってもいいですけど。子どもが病んだらほんま最悪なんでね。どうか病まないようにしてあげてっていうのが一番の思いです。僕は子どもが生まれたらバトントワリングさせて、島にぶち込んでフランス映画を見させる。これでいきます。
常石:わかりました(笑)。 ありがとうございます。
ベテランち:こちらこそありがとうございました。「Raise You」チャンネルもよろしくお願いします!

<対談ゲスト プロフィール>
ベテランち(YouTuber、歌人)
1998年大阪府生まれ。2017年に東京大学理科三類に入学し、医学部に在学中。2018年に東京大学Q短歌会で作歌を開始。「ベテランち」および「雷獣」のメンバーとしてYouTuberの活動する傍ら、「青松輝」名義で歌人としても活動する。著書に『4』など。